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ルポルタージュ

天草エア4年連続赤字…離島の翼、苦難のフライト


次のフライトまでの間に機体を点検する整備士

 全国でも珍しい航空機1機で運航する熊本県天草市の第3セクター「天草エアライン」(尾形禎康社長)。「離島・天草の翼」として2000年3月に就航したが、利用客が伸び悩み、03年度から4年連続で赤字を計上した。厳しい経営状況の中、運航するボンバルディア機のトラブルも続発し、安全性への対応も求められている。利用促進に向けた現場の取り組みを追った。

 ◆熊本間2往復に増

 15日午前9時過ぎ。青空が広がった同市の天草空港で、天草―熊本便を1日1往復から2往復へ増便した記念セレモニーが行われた。増便は熊本空港での羽田便などとの乗り継ぎを便利にし、日帰り客や関東、関西方面の客を増やすのが狙いだ。

 窓側の席に座った。間近でプロペラがクルクルと回り始め、加速してふわっと空へ。増便初日とあって、機内はほぼ満席。高度約1300メートルからは、天草の島々がはるか眼下に浮かぶ。気流の影響で若干機体が揺れたが、それほど気にはならない。離陸後15分もすると、「間もなく熊本空港に到着します」とアナウンスが流れた。

 飛行時間は約20分。熊本本土とつながる天草五橋を利用する陸路だと、車で3時間はかかる距離。空路の速さを実感した。天草市に住む入院中の兄の見舞いを済ませた横浜市港北区、税理士原田昭好さん(80)は「増便で羽田便との乗り継ぎが便利になった。待ち時間が少なくて助かります」と歓迎していた。

 ◆トラブル追い打ち

 天草エアラインの利用客数は、05年度の約8万5600人が最多で、毎年8万人前後を推移。06年度の平均搭乗率は55・3%にとどまり、採算ラインの65%にはほど遠い。06年度は、飛行時間5000時間ごとに義務付けられている重整備に5800万円がかかったうえ、燃料費の高騰もあって、累積赤字が約3億500万円に膨らんだ。

 さらに3月、熊本空港で起きた着陸時の車輪トラブルが追い打ちをかけた。油圧装置が作動せず、手動で前後輪を出して着陸。高知空港でボンバルディア機が胴体着陸事故を起こした直後だったこともあり、大きく報道された。その後もエンジン不具合などが発生し、欠航が相次いだ。

 一連のトラブル以降、機体の整備体制はどう変わったのか。整備部の江口英孝さん(35)の案内で、天草空港での機体の点検作業に立ち会った。

 点検は、整備士が次の便までの約25分間に約20か所を目視で行う。プロペラの回り方やエンジン内部などにライトを当て、見にくい所は鏡も使用。「以前、不具合のあった部分は、時間をかけてチェックするようになりました」と江口さんは話す。

 ◆1機体制見直しも

 航空機の点検や整備は、航空法で細かく基準が定められ、重要部品の交換時期も、飛行時間、使用回数などで決まっている。さらに、国交省は高知空港での事故以降、ボンバルディア機の点検回数を増やすよう指示。車輪の作動に関係する部分の点検期間が、飛行時間5000時間から500時間ごとに短縮された。

 天草エアラインは複数路線を1機で担うため、必然的に飛行時間が増え、点検や部品交換の頻度も高まる。不具合は欠航に直結するため、早期復旧を目指して夜通し整備することもざらだ。江口さんは「利用客の利便性と機体の耐空性を見極め、確実な点検整備を行っていくしかない」と力を込める。

 一方で、収支改善やサービス向上のための取り組みにも力を注ぐ。熊本便の増便のほか、地元住民にもっと利用してもらおうと、天草在住者を対象に片道運賃を最大約35%割り引いている。反響は大きく、登録者は2000人を超えた。

 ◆「なくなると困る」

 天草エアラインの就航で、移動が便利になったのは確かだ。天草市で眼科を開業する木村守一さん(31)は、福岡県柳川市の自宅へ帰るため、毎週福岡便を利用する。天草―福岡は空路でわずか35分。木村さんは「飛行機がないと福岡まで4時間以上かかる。路線がなくなったら困ります」と語る。

 「天草にとって大切な飛行機。これからも天草の空を守っていきたい」。取材の窓口となった同社総務課の藤川陽介さん(38)もそう強調する。天草エアラインが、今後も地域に根ざした「空の翼」としての役割を果たし続けるには、安全面、経営面でさらなる努力が求められている。

 天草エアライン 1998年10月、熊本県と天草の2市13町(合併で現2市1町)、民間の出資で設立。資本金4億9900万円。社員数は45人(機長4人、客室乗務員5人)で、99年製の双発プロペラ機「ボンバルディアDHC8―100型」(乗客39人乗り)を所有。定期便は、天草空港を拠点に福岡(片道35分)、熊本(同20分)、松山(同1時間10分・熊本空港での乗り継ぎ時間除く)の3路線計14便。2006年度の平均搭乗率は、福岡便59%、熊本便50・4%、松山便43・3%。


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