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カフェで読む 普段と違う本に会える


「書肆侃侃房」が開いたブックカフェ。新刊本や種々の古本に囲まれてゆったりと本を読むことができる(福岡市中央区薬院の「Read cafe」で)=足立浩史撮影

 読書の秋なのに、忙しくて余裕がないという人も多いだろう。気分を変えて、ブックカフェに立ち寄ってみては。本とふれあうひとときの大切さを、思い出させてくれそうだ。


「カフェを拠点に、朗読会や作家の講演会も企画していきたい」と話す田島安江さん

 明るい光が入る窓際の席で、田島安江さん(65)は、原稿用紙を広げていた。

 福岡市中央区の「Read cafe(リードカフェ)」は、田島さんが代表を務める同市の出版社「書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)」が4月に開いたブックカフェだ。田島さんも、出版予定の原稿の推敲(すいこう)や読書に利用しているという。

 店には、紀行やグルメ本、ノンフィクションなど同社が刊行した約200冊のほか、田島さんの蔵書を含めた古本約300冊が並ぶ。いずれも販売しているが、飲食しながら自由に手に取って読むことができる。

 「時間を気にせず、ゆっくりと本が読める空間を作りたかった」。詩人でもある田島さんにとって、かつては喫茶店がそんな居場所だったそうだ。

 チェーン店が増え、昔ながらの喫茶店が姿を消しつつある今、東京や韓国・ソウルの街角でよく見かけるブックカフェが、福岡にもほしくなった。

 大阪のダイニングバーなどで働いた経験から、長男の圭さん(33)が店長を務める。30歳代のスタッフとともに、木をふんだんに使った店作りに取り組んだ。ピザやパスタなどイタリアンを中心としたメニューにし、ワインも置いた。

 飲食や会話を楽しむ人、勉強する人など、過ごし方は様々だ。子どもとソファでくつろぎ、それぞれ絵本や雑誌を読む夫婦もいる。

 仕事の関係なのか、1か月に1度ほど東京から訪れる40歳代ぐらいの女性がいる。夜、ワインなどを注文し、古本の棚からいつも同じ本を取り出す。「少しずつ読み進めるのが楽しいのでしょう」と圭さんはその本を非売品にし、来店を待っている。

 平日の昼下がり、古本の詩集を読んだ福岡県直方市の主婦行正和子さん(61)は、「普段と違う本にふれる良い機会。自宅での読書も好きだが、街の雰囲気を楽しめるこんな場所もいい」と話した。

 ビジネス書充実 会社員応援


ビジネス関係の本に囲まれた富川盛充さん(沖縄県浦添市で)

 沖縄県浦添市には、ビジネス書をそろえた「ビジネスブックカフェ」がある。ホームページ制作会社を営む富川盛充さん(38)が2月から、「サラリーマンを応援したい」と喫茶店の一角を間借りして始めた。

 「マネジメントの神様」と呼ばれた米経営学者ピーター・ドラッカーの著書をはじめ、マーケティングや自己啓発の本、企画書や見積書の作り方などのノウハウ本、企業経営者の著書などが並ぶ。

 サラリーマン漫画として有名な「島耕作」シリーズ(弘兼憲史作)、大阪の金融業者を主人公にした「ナニワ金融道」(青木雄二作)などの漫画も。

 以前、カフェに立ち寄った30歳代ぐらいの男性は、「営業先になかなか話を聞いてもらえない」と悩みを打ち明けた。「アポ取りの達人」(ぱる出版)という本を貸すと、男性は1か月後、「元気が出た」と笑顔で返しに来たという。

 「今の時代、自分で起業できるぐらいの勉強をしておくことは、会社生活の上でも決して損にはならない」と富川さん。今後、間借りでなく本格的なカフェを開くのが目標という。(喫茶ゴールデンポスト=098・874・9363)

 私の1冊語れるバー


お客さんと本の話をする栗田真二郎さん(中央)(福岡市中央区今泉で)

 携帯電話をいじる人より、本を読む一人客が多い。福岡市中央区のレストランバー「アフター・ザ・レイン」は、そんな大人のバーだ。

 フリーライターの元木哲三さん(39)、栗田真二郎さん(37)が2年半前、1979年創業の老舗バーを譲り受け、それぞれの蔵書などを持ち寄ってブックバーに衣替えした。

 メニューには、作家や物語にちなんだ料理もある。レシピ集「向田邦子の手料理」(講談社)から「枝豆のしょうゆ煮」(400円)や、村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」(同)で、主人公の「僕」が友人に作る「じゃが芋とサラミの炒め物」(700円)など7品だ。

 本は貸し出しもしている。客が本を1冊、店に寄付すると、ドリンクが1杯無料になる。ただし、「思いのこもった本について語り合いたいという趣旨なので、読んでいないものは困ります」と店長の栗田さん。

 活字通じ 人とつながる


 熊本市でカフェを併設した「(だいだい)書店」を開く田尻久子さん(41)=写真=に、ブックカフェの楽しみ方を聞いた。

          ◇

 大型書店やネットですぐに本を買うことができる時代。でも、本好きな店主がこだわって作った空間で、くつろぎながら読書に没頭できるブックカフェは、得がたい居場所です。

 「最近面白い本ありますか」と店主に聞いて本を選んでもいいし、ほかのお客さんと自然に本に関する会話が生まれるのも楽しい。活字を通して、知らない人同士がつながります。

 「読みたい」と思った気持ちのまま、すぐに座って作品の世界に浸ることができるのも魅力です。

 新たに本を置く喫茶店やカフェも増えています。町の本屋さんは減っていますが、ブックカフェはこれから増えていくのではないでしょうか。

2010年10月4日  読売新聞)
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