なじみのない乗り物
夏休みは非日常を味わう絶好の機会。いろいろな体験をしてみたい。3回にわたってお届けする「特別編」の初回は、普段なじみのない乗り物に乗ってみた。
ケーブルカー&スロープカー/気軽に山頂、気分上々 北九州・皿倉山
皿倉山の山麓駅と山上駅を結ぶケーブルカー。ガラス張りの天井からも景色が見渡せる(北九州市八幡東区で)=足立浩史撮影
皿倉山の山頂付近を走るスロープカー。8月末まではケーブルカーとともに毎日、夜間運行しており、夜景も楽しめる
関門海峡や関門橋の景色を楽しめる31人乗りの「火の山ロープウェイ」(山口県下関市で)
山に登りたいけれど時間や体力がないという人に、ケーブルカーやロープウエーの旅はどうだろうか。子ども連れやお年寄りも、景観を楽しみながら山登りの気分を味わえそうだ。
北九州市のシンボル、皿倉山(標高622メートル)はそんな旅のできる山だと聞き、足を運んだ。
福岡市・天神から高速バスで約1時間。高速帆柱ケーブルバス停(八幡東区)で降りた。そびえる皿倉山を見ながら3分ほど歩くと、山小屋風の山麓駅に着いた。
駅舎には、黄色いケーブルカーが1両止まっていた。大きな窓としゃれた外観が目を引く。「はるか号といいます」。運行会社「帆柱ケーブル」業務企画課長の田島敏明さん(63)が説明してくれた。
9合目の山上駅に止まっている青色の「かなた号」と同時に出発し、途中ですれ違う。両駅間の距離は1100メートル、標高差は440メートルあるそうだ。
いずれも2001年に導入したスイス製の新型車両で112人乗り。天井もガラス張りで、開放感がある。座席が斜面に沿って階段状になっているのが、列車やバスと違うところだ。
ゆっくり動き始めた。ケーブルが巻き上げられる鈍い音とともに、すーっと滑るように上がっていく感じだ。眼下に北九州市の街並みや洞海湾、響灘が見え始めた。最大傾斜は28度。「スキーのジャンプ台と同じです」と車内アナウンスがあった。
5分ほどで山上駅に着き、やはり天井がガラス張りのスロープカーに乗り換えて山頂を目指す。斜面の軌道159メートルを電動モーターで走る。車窓に広がる大パノラマに圧倒された。
約3分で山頂の展望台に到着。この日は真夏日だったが、吹き渡る風が涼しい。
登山道を歩けば山頂まで約2時間かかるが、このコースだと10分ほど。東京から福岡県飯塚市に帰省中という主婦(60)は、母(84)と弟(57)と一緒で、初めて乗ったという。「母のような高齢者でも、気軽に山登りできるのがいい。景色が素晴らしく、空気もおいしい」と笑顔だった。
ロープウエー/関門海峡を一望 下関・火の山
山口県下関市にある「火の山ロープウェイ」にも足を延ばした。火の山(標高268メートル)のふもとから山頂までの439メートルを4分で結ぶ。
ケーブルカーとスロープカーは地上の軌道を走るが、ロープウエーは、ワイヤロープにつるしたゴンドラが空中を移動する。山頂へは車でも行けるが、木々に覆われた道を走るので景観は今ひとつ。ロープウエーだと、刻々と変化していく眺望を楽しめる。車窓から関門海峡や関門橋を見渡し、爽快な気分になった。
冬季は運休しており、11月28日までの火、水曜日を除く毎日運行している。レストランや土産物売り場がある山頂の展望台でひとときを過ごすのもいい。
◆九州・山口ここにも
九州・山口にはほかにロープウエーとケーブルカーが計8か所ある。
▼長崎ロープウェイ(長崎市、淵神社〜稲佐岳駅の1090メートル)
▼雲仙ロープウェイ(長崎県雲仙市、仁田峠〜妙見岳駅の500メートル)
▼阿蘇山ロープウェー(熊本県阿蘇市、阿蘇山西〜火口西駅の858メートル)
▼仙酔峡ロープウェイ(同、仙酔峡〜火口東駅の1485メートル)※運休中
▼近鉄・別府ロープウェイ(大分県別府市、高原〜鶴見山上駅の1816メートル)
▼ラクテンチケーブルカー(同、雲泉寺〜乙原駅の253メートル)
▼大平山ロープウェイ(山口県防府市、山麓〜山頂駅の953メートル)
▼岩国城ロープウェー(同県岩国市、山麓〜山頂駅の412メートル)
セグウェイ/移動ロボットで森林浴 北九州・山田緑地
蒲原さん(右)ら山田緑地のスタッフはセグウェイを自在に操り、園内での作業や見回りなどにも使うという(北九州市小倉北区で)
サッカーワールドカップ南アフリカ大会でも警備に使用された立ち乗り電動二輪車「セグウェイ」。乗り心地を確かめたくて、セグウェイでの自然散策ツアーを行っている北九州市小倉北区の山田緑地を訪ねた。
「これは乗り物というより、移動ロボットです」と蒲原聖さん(33)。緑地の管理を市から委託されているNPO法人「里山を考える会」の主任研究員だ。
セグウェイには、人の重心移動を感知するセンサーやコンピューターが搭載されている。行きたい方向に重心を傾けると、徒歩から自転車程度の速さで進む。
ツアーは、歩くのが嫌いな人にも、森林や湿地帯が広がる緑地の魅力を知ってもらおうと、4月から始めた。「排ガスが出ないので環境に優しい。音が静かで話もしやすく、自然散策に向いている」と蒲原さん。
直径約50センチのタイヤが左右についた踏み台に足を乗せると、最初は前後に倒れそうになったが、体の力を抜いてまっすぐ立てば、ピタッと止まった。
鳥の声を聞きながら木陰を進み、ジャコウアゲハやピンクのネジバナを観察した。身長より高い目線で移動するので、普段と景色が違う。蒲原さんは「ヘビが嫌いな人も、これなら冷静に観察できますよ」。
◆セグウェイ体験施設
▼ハウステンボス(長崎県佐世保市) 園内散策ツアー。16歳以上で約50分、3500円。(アクティビティセンター=0956・27・0131)
▼セントレジャー城島高原パーク(大分県別府市) 試乗体験。18歳以上で約5分、500円。(0977・22・1165)
▼鹿児島市立科学館 試乗体験。毎月第1土曜日正午〜午後1時。16歳以上。無料。(099・250・8511)
▼おきなわワールド 文化王国・玉泉洞(沖縄県南城市) 園内散策ツアー。16歳以上で約40分、3500円。10分で1000円のコースも。(35sooeido=0120・70・8930)
■帆柱ケーブル 093・671・4761(ケーブルカー、スロープカー通し券往復で中学生以上1200円、小学生以下600円)
■火の山ロープウェイ 083・231・1351(往復で中学生以上500円、小学生以下250円)
■山田緑地 093・582・4870(ツアーは16歳以上で、講習を含め約2時間。1人8000円。15分500円の試乗体験も)
(2010年7月26日 読売新聞)