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天然せっけんが生活に潤い 地元素材ふんだんに配合


前田さん(中央)らが作ったさまざまなせっけんが並ぶ暇楽の店内。まるで菓子店のようだ(福岡県糸島市で)=中嶋基樹撮影

 地元産のハチミツやヨモギといった素材を使った固形の手作りせっけんが、注目を集めている。身近な天然素材に対する安心感や泡立てる楽しみなど、手軽な液体せっけんにも負けない魅力が見直されているようだ。


菓子作りのかくはん機で原料を混ぜる

地元産のにがりなどを使ったせっけん

地元産のハチミツを配合したせっけん

次々に製造される「よもぎせっけん」(熊本県山鹿市の「地の塩社」で)

 木造の工房に入ると、色も形も様々なせっけんが、甘い香りを漂わせていた。

 小さなケーキが並んだ洋菓子店のような工房は、福岡県糸島市にある「海辺の手作り石けん工房 暇楽(からく)」。店主の前田まさ代さん(40)が、天然の原料だけで手作りした製品を見せてくれた。

 主原料はオリーブ、ココナツ、パームなどの植物油。合成の洗浄料や着色料などは加えず、ハーブやアロマオイル(精油)、地元産の天然素材で色や香りをつけ、保湿性を高めるという。

 市内の農家が放し飼いで育てた鶏の卵を加えた円形のせっけんは、黄身の黄色と白身の白のツートンカラーだ。ミツバチをかたどった八角形のものは、やはり地元産のハチミツを配合し、やわらかな黄色を出した。

 このほか、市内の酪農家が生産しているヨーグルト、玄界灘の海水からできた「にがり」も使っている。「地元で調達する材料は新鮮で、とろりとした感触と豊かな泡立ちを生み出してくれる」と前田さん。

 以前、福岡市内で美容サロンを開いていた前田さんは、合成の添加物で洗浄力を強めた洗顔剤、保湿力を高めた化粧品に「肌荒れの原因にもなるのでは」という疑問を抱いていたという。

 体調を崩したのを機に、2002年に糸島半島に移り住んですぐ、「肌への刺激が少なく、分解されやすいため環境にも優しい」と、せっけん作りを始めた。

 最初は自分用と知人らの分しか作っていなかったが、口コミで評判が広がり、04年5月に工房をオープン。薬事法に基づく製造、販売の許可も取った。

 大量生産されるせっけんは、化学反応を早めるために熱を加えるのが一般的だが、前田さんは、非加熱の伝統製法で仕上げている。油脂の劣化が抑えられるうえ、グリセリンなど保湿成分をより多く残せるそうだ。

 全12種類の定番商品は1個(60〜100グラム)で1000円前後。市販品に比べて割高だが、固定客にはアレルギーや乾燥肌などで悩む人も多い。6年前に市販の洗顔料から暇楽のせっけんに替えたという福岡市早良区の会社員加来なお子さん(38)は「ニキビがいつの間にかなくなり、肌がきれいになったと言われる。天然素材なので安心して使えます」と話した。

 薬草、漢方素材 泡立ち豊か

 1975年の創業以来、熊本県山鹿市でせっけんの製造を続けている「地の塩社」は、県内に自生するヨモギや、無農薬、無化学肥料栽培のヘチマ、市内の温泉からわき出る水を原料にしたせっけんを開発し、全国で販売している。

 80年に売り出した「よもぎせっけん」は、同社の看板商品だ。ヨモギは草餅やおきゅうのもぐさに使うほか、昔ながらの家庭療法で止血などにも用いられてきた薬草。毎春、阿蘇を中心とした県内の原野に生える新芽を、各地の農家に採取してもらい、調達している。

 年間でエキス分約800キロから約30万個(1個98グラム)を製造する。「ヨモギエキスの保湿成分と、泡立ちの良さが特徴です」と、社長の田口淳さん(45)。

 食用や漢方ではせき止めなどに使われるヘチマは、約20年前から使い始めた。同県山都町の農家が栽培したヘチマの茎から水をとり、その発酵液を固形せっけんや化粧水の原料にしている。

 10年前からは、800年以上の歴史を持つ山鹿温泉の元湯「さくら湯」の水を濾過(ろか)、煮沸消毒して配合した商品も作った。田口さんは「地元産を使うことは、農家の生活を支え、自然環境を守ることにもつながる。自然の恩恵を生かし、生活に密着した商品作りを続けたい」と意気込む。

 百貨店、雑貨店に専用コーナー


さまざまな素材を配合した固形せっけんが並ぶインキューブ天神店の専用売り場

 固形せっけん専用の売り場を設けている百貨店や雑貨店も多い。

 福岡市・天神の「雑貨館インキューブ天神店」では、固形せっけんの売り上げが毎年1割増のペースで伸びているという。国内外の約270種類をそろえ、暇楽と地の塩社の商品も置く。

 1か月前には、「お気に入りの石けんをみつけよう 自分の肌に合うこだわりの石けん」と銘打ち、おすすめの商品を集めたコーナーをレジ近くに新設した。

 最近の売れ筋は、肌に潤いを与えるとされるお茶の成分を配合したものだという。鹿児島県・桜島の火山灰や福岡県産の米ぬか、竹炭など、九州産の素材を使った商品もある。価格は136〜3990円と幅広い。

 「固形」販売 ほぼ横ばい

 せっけんメーカーなどでつくる日本石鹸(せっけん)洗剤工業会(東京)によると、体を洗う固形せっけんの販売量は、1991年の約11万2000トンをピークに、2005年には5万トンを切った。だが、06年以降は4万5000〜5万トンで推移し、ほぼ横ばい。減少傾向に歯止めがかかっている。

 工業会は「液体と比べてべたつかず、さっぱりしながら潤いも残る使用感が受け、一定の需要を保っているのでは」と分析する。

 暇楽 092・328・1345
 地の塩社 0968・43・1717
 雑貨館インキューブ天神店 092・713・1092

2010年7月19日  読売新聞)
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