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愛情あふれる食卓に パネル討議詳報

 教育ルネサンス食育推進プロジェクト「食アイランド九州・山口フォーラム」が7月31日、福岡市の読売新聞西部本社で開かれ、主婦や学生ら約60人が受講した。料理研究家、フード・プロデューサーの橋本祐充子氏が「郷土料理は守るべき地域の文化と伝統」と講演。パネルディスカッションでは橋本氏と総合食品メーカー、フランソア(本社・福岡県新宮町)の城戸光一社長室長が「食卓で親子のコミュニケーションを」と話した。(コーディネーターは、工藤正彦・読売新聞西部本社編集委員)


城戸光一氏

橋本祐充子氏

 工藤 フランソアグループの企業理念と食育への取り組みを――。

 城戸 まずフランソアが考えていることは食の安心・安全です。創業当初から「お客様中心の商品づくり」を理念として取り組んでいます。現在の諸物価の高騰は大きな問題ですが、一方では私たちに食の安心・安全を考えるための「気づき」を与えてくれているという一面もあると思うんですよ。現代の食生活では、体内に取り入れるものすべてが安全であるとはいいがたいと思います。人はぜいたくになり安くてうまいものを効率的に入手したいと思い、それを実現するために便利なものを数多く作りだしてきました。
 その一つが合成の添加物だったりするわけですね。もちろん、合成添加物はすべてが危険というわけではありません。しかし私たちは「体に不要なものは省き、良いものを賢くとってほしい」と考え、フランソアの「スローブレッド」「ナチュレル」というブランドでは、合成添加物は一切使わず、天然添加物を使用してパンを作っています。

 工藤 それらの理念が浸透しつつあるという実感はありますか。

 城戸 10年くらい前から取り組んできましたが、最初はあまり評価されませんでした。ここ数年ぐらいでしょうか、私どもの「体のことを考えたものづくり」に急激に関心が向けられたのは。長年の思いが受け入れられうれしいですね。

 工藤 橋本さんは佐賀県武雄市で「道の駅」に産直レストランをプロデュースされています。

 橋本 レストランがある武雄市山内町は有田町に隣接し、春の陶器市期間中は町への車が渋滞していました。車のお客様からの要望で仮設トイレを設置し、野菜を毎週販売するようになり、佐賀県と国に要望した結果、10年前に「道の駅」ができ、地元の野菜などを販売する場所もできました。
 そのうち、お客様から「ここでしか食べられないものはないですか」という要望が出て、野菜を中心に約40種のメニューをそろえたバイキング・レストランを始めたんです。禁酒禁煙で、営業時間は午前11時から午後3時までです。健康に意識を持つ消費者が増えると確信していましたので野菜を中心にしたビタミン補給所みたいなものを作れば必ず成功すると思ったんです。
 健やかな心と体の健康をはぐくむのも、基本は家庭の料理です。しかし、女性も仕事をしていて家庭の料理だけではどうしても限界がある。家族が食卓を囲む時間さえないのが現状ですから。それなら私たちが家庭の食卓の延長として、家庭料理に近い料理でサポートできるのではと考え、食卓のステージを提供しようとしたのもこのお店の一つの目標です。今後は食材の学習会や料理の実演を通し、野菜の食べ方を伝えていきたいと考えています。

 工藤 子育て中の若いお父さん、お母さんへのメッセージを含め、食卓のあり方への提言を。

 城戸 まず食の安心・安全の観点から言えば、食品表示の内容を見るようにしてほしいですね。企業が安心・安全な食品を提供する、また正しい表示を行うことはもちろんのことですが、最後は食べる皆さんの判断。そのためにも内容をしっかり把握することが大切です。そしてもう一つ、食卓のあり方という点で、お父さん、お母さんが、愛情という、ひと手間をかけることが大切だと考えます。例えば、メロンパンを朝、テーブルの上にぽんと置いておくだけでなく、オーブントースターで温めるとか――これが香ばしくて、おいしいんですよ――、ヨーグルトをつける、野菜ジュースをつける。ちょっとした手間をかけていただきたい。それが親と子供のコミュニケーションの発展に役立つのではないでしょうか。もちろん親が何でもしてやればいいかというと、そうではありません。子どもも出来ることをする、自分で考えて行動する、そうして自主性をはぐくんでほしいと思います。

 工藤 料理教室も開催されるそうですね。

 城戸 はい、このような考えから、料理づくりを通して家族のコミュニケーションを図ってみませんかということで企画しました。

 橋本 現在、食を巡る問題は様々ありますが、基本は、消費者一人一人の意識です。何が正しくて何が体にいいのか勉強しなければいけない、そういう時期に来ていると思います。まず大人が行動を起こし、勉強し、子どもたちを育てていく。そういう義務があると思います。



基調講演「家族の健康は食卓から―郷土料理の知恵と実践」 フード・プロデューサー 橋本祐充子氏

 郷土の食文化、未来に伝承を


笑顔で講演する橋本氏

 佐賀は北海道に次ぐ大豆の生産地です。大豆には、必須アミノ酸8種が含まれているんですが、理想型に比べ、メチオニンが不足し、米はリジンが少ない。大豆と米を同時にとればそれらを互いに補うことができるわけで、ご飯とみそ汁というのは理にかなった食べ方です。「みそ焼きおにぎり」もそうですね。

 先人たちは、その土地にできるもの、その季節にできるものをうまく組み合わせて、すばらしい料理にしていたんです。大豆を発酵させて、みそ、しょうゆという、優れた調味料も生み出した。こうした食文化は大切に受け継ぐべきです。

 地域特有の食材や調味料で作られる郷土料理にはその土地の暮らし、気候がはっきりと表れます。行事食も、各地域や季節の食材を工夫した、栄養面でも大変優れた料理といえます。これらを大切にし、それを子どもや孫たちに伝承することも食育の基本です。



 ◆佐賀の郷土料理…ふなんこぐい


 「おくんち」などのハレ(祝い)の日に食べる郷土料理。ウロコを取り除いたフナを昆布で巻いておく。ワラを敷いたナベにフナとゴボウ、ダイコン、トウガラシ、ショウガを並べる。みそ、砂糖、みりん、酒を溶かした汁を注ぎながら煮込む(調理法はさまざまあり、これは佐賀県鹿島市の一例)。

 佐賀平野には農業用や貯水用の堀(クリーク)が多く、秋に水を抜くとフナがとれ、鹿島市では神様へのお供えを売る「ふな市」も開かれている。(写真と調理法は、佐賀県・さが“食と農”絆づくりプロジェクト会議提供)

2008年8月19日  読売新聞)
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