
海老井・福岡県副知事に聞く
海老井悦子・福岡県副知事に工藤正彦・読売新聞西部本社編集委員が「食育をどう進めるか」について聞いた。副知事は、生産者と消費者の〈思い〉の共有や、子供たちの夢や目標を実現するよりどころとしての家庭の役割などを強調した。
えびい・えつこ 九州大文学部卒。県立城南高校校長、教育庁理事、生活労働部理事(兼)次長、県立福岡中央高校校長などを経て2006年4月から現職。
◆生産者と消費者、相互理解を
工藤 「食育」が国民的課題となっています。
海老井 例えば、朝食を必ず食べる児童生徒の割合が小学生で84・8%、中学生で76・3%(2004年度)という数字に見られますように、食習慣の乱れ、栄養バランスの崩れ、食物を大切にする心が失われつつあること、そしてそれが肥満や生活習慣病の増加につながっているといった問題があります。一方、食を支える農林水産業の現状では、輸入農産物の急増や農林水産物の価格低迷、さらに生産者の高齢化・後継者不足など深刻な問題が山積しています。
工藤 福岡県は昨年3月「ふくおかの食と農推進基本指針」を策定しましたね。
海老井 食とそれを支える農林水産業の重要性、農山漁村の持つ多面的な機能への理解を深めていただきたい、それを健康で豊かな生活の向上に役立てていただきたい、ということです。基本指針はその実現に向けてこれまでは関係部署がそれぞれ進めていた施策を総合的・体系的に推進するための方向性を示すものです。
工藤 指針は、家庭・地域、学校における食育の推進、食生活改善や地産地消の推進などの方針をもとに、具体的な内容になっています。
海老井 指針では目標数値も掲げました。
工藤 数値は分かりやすいですね。
海老井 具体的な運動にも力を入れます。家庭・地域で食育を推進するために、子どもや親子を対象にした体験学習を進めます。地域の食材を使った親子調理や流通・加工現場での体験は食に対する関心を高めるはずです。健全な食習慣を身につけるとともに、地域にはどんな食材があり、どのように調理して食べるのかといった食文化を学び、伝えることにもつながると思います。
工藤 食の生産現場にふれる機会が少ないことも感謝の心を失わせています。工業化・都市化・核家族化といった歴史的な背景もあり、解決はなかなか難しいのですが……。
海老井 生産者と消費者がそれぞれの「思い」を理解しなくてはならないと思うんです。そのために小学生が農家や酪農家に滞在するファームステイ、漁業体験学習を支援します。廃校や古い民家を改修して都市と農山漁村の住民が交流する拠点、市民農園の整備なども考えています。
工藤 2001年から展開している青少年アンビシャス運動とも共通する面がありますね。
海老井 豊かな心、幅広い視野、それぞれの志を持つ(アンビシャスな)たくましい青少年の育成をめざしています。かなり成果があがっていますので、第2期となるこれからの5年間でさらに新しい展開をします。
工藤 私が痛感しているのは若い世代のコミュニケーション能力の低下です。不登校やニートの問題とも関係があるのでは。
海老井 まず家庭で親子の会話をしっかり、そして友人や先輩、後輩、大人などできるだけ多くの人たちと交わっていろんな生の体験をすること、また読書を通して人の心や現実、世界の広さを言葉によって知ることがとても大切だと思います。
工藤 全く同感です。近年、家庭や地域の教育力の低下が問題になっていますが。
海老井 家庭はすべての教育の出発点です。子どもたちは乳幼児のころから、家族から与えられる惜しみない愛情、多くの語りかけ、スキンシップなどによって信頼関係を築くことができます。
子どもたちは家庭をよりどころとして、それぞれ夢や目標を求め実現に向かって挑戦していく、それを先生や大人が支え励ます、家庭や学校、地域が連携してアンビシャス運動がますます広がっていくことを期待しています。私たちはその先頭に立ちたいと思っています。