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旅の鉄学
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由布岳寄り道 急カーブ

雪と樹氷で山頂が白くなった由布岳のふもとを走る「ゆふいんの森」(20日、大分県由布市で)=林陽一撮影
湯の坪街道を散策する観光客(20日、大分県由布市で)=林陽一撮影

 若竹色の特急「ゆふいんの森」がJR久大線由布院駅(大分県由布市)に着いた。由布院盆地は2月中旬でも、冷気がほおを刺す。駅舎前をほぼ真っすぐ延びる通りの奥に、由布岳(1583メートル)が貫禄たっぷりに座していた。

 頂上付近に厚い雲がかかり、山頂部の3分の1ほどがうっすら白い。目を凝らすと、澄んだ空気の先に残雪や樹氷が山肌の木々を覆っているのが見えた。「豊後富士」と呼ばれる麗姿を望みに来たかいがあった。

 盆地に吹く風は速く、向きも変わりやすい。3分ほどすると、雲の切れ間から二つに分かれた頂上が姿を見せ、1分後には再び隠れた。

 「いつも包み込んでくれる母親みたいな存在」とは、旅館「いよとみ荘」4代目の冨永希一さん(35)の由布岳観。「(りん)として見える日もあれば、つまらないことをした自分を怒っているように見える日もある。毎日表情が違う」


 しばらく辺りを散策すると、盆地のどこからも山の景色を楽しめることに気づいた。「ここの露天風呂のほとんどは、由布岳を眺められるように配置されているんですよ」。由布院観光総合事務所の米田誠司さん(46)が明かす。

 由布岳のことを考えながら、温泉旅館や土産品店が集まり、若い女性でにぎわう「湯の坪街道」から再び駅へ。そういえば、駅に至る鉄路は強引なカーブを描いていた。「一六(いちろく)曲がり」と地元では呼ぶ。

 1925年開業の由布院駅と線路は当初、国の計画に存在しなかった。「線路と駅を」。地元の誘致活動の先頭に立ったのが銀行頭取、衛藤一六。駅は由布岳の最も近くに造られ、衛藤の名はカーブの愛称になった。

 特急「ゆふ」が到着するまでホーム端の足湯に浸る。温かさが体を伝わるにつれ、人と山の深い結びつきへの感慨も深まる。3月には大分川沿いに菜の花が咲き始め、辻馬車が走る。盆地の春に思いをはせながら、赤い車体に乗り込んだ。

 ◆ゆふいんの森

 JR久大線博多―由布院駅間の特急は1日に上下各6本運行。片道約2時間。人気の「ゆふいんの森」は車内をヨーロッパ調のインテリアで統一。杉河内駅(大分県日田市)近くの名所「慈恩の滝」で徐行したり、客室乗務員が写真撮影や観光案内をしたりするサービスも。福岡市内から使える2枚きっぷは8000円(指定席)。問い合わせはJR九州電話案内センター(092・471・8111)や地元の主要駅へ。

2010年2月24日  読売新聞)
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